作品の感想をネタバレありで書くとこ

主にゲームの感想、考察、妄想をネタバレ全開で書いてるので気を付けてください

『GNOSIA』紹介と、ネタバレ感想

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人狼ゲーム風SFサスペンスゲーム、『GNOSIA』をプレイした。

今回は初めての記事なのでとりあえず


といった形で書いてみようと思う。


ネタバレなしで紹介

ゲームシステムについて

本作のゲーム性は人狼ゲーム(汝は人狼なりや)を一人プレイ用にアレンジしたもので、
プレイヤーは繰り返されるタイムループの中でキャラクターたちと何度も何度も人狼ゲームを繰り返すことになる。
ちなみに陣営、役職は毎回ランダムで振り分けられる。

しかし、実際の人狼ゲームとはプレイフィール(今後よく使うと思われる言葉。プレイしているときの感触のような意味合いで使っている)は
かなり異なっている。

例えば、実際の人間同士で行われる人狼ゲームでは自身の感情を排して論理性によって議論、行動するほうがよいとされるが、
作品上のキャラクターにとってはこれはゲームではなく、自分たちの命や、個人に対する信頼が脅かされているので、
ゲームの展開は個人的な感情に大きな影響を受ける。

人狼ゲームとは異なり、自分の陣営の勝利のためなら自分は死んでもいいや、とはならないし、誰々さんのことが好きだから信じちゃおうといった思考も平然と起きる。

また、キャラクターたちは人同士が人狼ゲームを行う際のセオリーなど知らないので、「ここは普通役職ローラーでは!?」とか思ったとしても、キャラクターたちが同調してくれるとは限らない。
(ちなみに、ローラーを提案すること自体に高いゲーム内ステータスを要求されるため、ローラーの提案自体あまり起きない)


議論の流れも、「アイツが怪しいと思う」「あの人は信頼できると思う」「そうは思わない」というとってもシンプルな発言が繰り返され、
発言には基本的に具体的な理由を提示したうえで行われる実際の人狼ゲームとは似て非なるものだろう。

等々の理由により、「人狼ゲームが好きだ」って人に手放しにオススメできるゲーム性でもなければ、「人狼ゲームは苦手だ」という人だからと言ってオススメできないわけでもない。
私はむしろいわゆるカードゲームや、コマンドRPGの戦闘に近い感触を覚えた。



シナリオについて

前述したように本作はいわゆる「ループもの」である。
もっといえば「最初からループものだと分かっているループもの」だ。

「実はこの世界はループしているのだ!」
「マジか!!!!!」

といった驚きはない。
最近だと『DEATH LOOP』『Twelve Minutes』あたりと一緒だね。


主人公は繰り返されるループの檻からの脱出を目指し、何度も何度も死んだり、生き残ってはループさせられたりをくりかえすことになる。
大局的に見ればひとつひとつの人狼ゲームの勝敗はどうでもいいともいえるかもしれない。
展開も「鬱ゲー」のようなシリアスさは薄く、コミカルな展開も少なくないため、殺し合い騙しあいの胸糞の悪さはほとんど感じない。

世界観について

舞台は現代から数百年先の未来で長距離を航行する宇宙船。
ときたまよく意味の分からない難しい単語、いわば「SF用語」が散見されるが、いわゆる「ガチなSF」からすればむしろとてもわかりやすく、
万人に受け入れられやすいキャッチーな世界観だと感じた。
どう見てもネタキャラにしか見えない見た目のヤツもいたりする。

宇宙、未来っぽさをカジュアルに楽しめるレベルのライトなSFと言って問題はなさそうだ。



キャラクターについて

主人公は性別選択可能、名前変更可能で、セリフを勝手にペラペラ喋ることはない。
FF主人公かドラクエ主人公でいえばドラクエ型の主人公だ。
そのため、プレイヤー=主人公と捉えやすいつくりだ。

俺は男主人公でやったが、人狼ゲームの展開次第では女性キャラとのロマンスもあり、ギャルゲーに近いと感じた。

男女問わず個性的なキャラクターたちと仲良くなったり敵対したりを繰り返すので俺の中では「キャラゲー」という印象が強い。
ちなみに「キャラゲー」とは「キャラクター自体の魅力が、ゲーム全体の魅力の多くの割合を占めるもの」と俺は定義している。

いろいろな方向性のキャラがいるが、どのキャラクターも誰かの「推し」になれるような魅力を感じる作品だったし、
むしろ「お気に入りのキャラクター」が一人も見つからなかったなら、このゲームはそのプレイヤーにとっては退屈なものになるかもしれない。



その他の要素について
  • UIは少し不親切な部分もあるかもしれないがOKなレベル。
  • キーコンフィグはキーボード+マウスでやる場合は設定の不自由だ。(特にホイールアップにバックログを割り当てられないのは”PCでノベルゲームをよく嗜む人”にとってはキツいものがある)
  • お金掛かってるなとは思わないがノベルゲーム的な演出のセンスは良い。
  • 音楽自体の良し悪しは俺には分からないが、BGMで不快になるようなものはなく、多分音楽的には良い作品なんじゃないだろうか。
  • SEは小気味よく感じるようにしっかりと調整されているし、ゲーム性の補助的な役割もしっかりこなしていた。この辺は古来より続く推理系ゲームの文脈に即したものだろう。
  • キャラクター、背景問わずイラストは魅力的だし、特徴的なので没個性的だとは1ミリも思わなかった。
  • メインストーリーの進行にランダム要素があったり、次にやるべきこと分かりにくい部分もあったが、ヒントは多く与えられていたので不愉快さは少なかった。
  • とはいえ終盤にダレてくることはあったのでWikiを見てしまったが、ネタバレに配慮した段階的なヒントがすぐに発見できた。有志に感謝。

ネタバレありで感想、考察

ここからはネタバレ全開のガチ感想なので未プレイ者は注意


というわけでグノーシア、エンディングを迎えたわけですが
まず言わなきゃいけないのは、「プレイ前の期待が大きすぎた」ということ。
いやだって「絶対にプレイすべき名作」とまで言われているのを見たし、俺みたいなオタクは「ループもの」なんて大好物じゃん。
だからシナリオにはかなりの期待をしていたが……正直、「絶対にプレイすべき名作」ではないだろう。

とはいえ、これは客観的な評価であって、俺自身の個人的な感想は別だ。
プレイしながら俺のキャラクターへの好感度がとても高まっていったので、
エンディングは胸を打つものがありましたね…。

とかく、キャラクターの魅力に評価を左右される作品だということは間違いないので
「絶対にプレイすべき」とか言ってた人の感情はわかる。もうほんと、わかる。

特にセツはズルかった。もしかしたら無限にも感じていたかもしれないような時間の檻の中で唯一、お互いの気持ちに共感しているという存在。
愛着以上に依存のような感情になるのは致し方ないことだろう。心の弱ささえ見せてくれるので、大抵のプレイヤーは本能的に好きになっちゃうんじゃないか?
セツは真面目で論理的なキャラクターのようだが、それを上回る優しさがあふれ出ていた。あるいは甘さと言ってしまってもいいくらいに。
議論上でも、ロジックが高そうな振る舞いは多かったが、意外と騙しやすくてかわいい。
何度も言うが「キャラクターの魅力に評価を左右されるシナリオ」だったので、開発側もそれはわかっていてあんなにデレデレにしたのかもね。
性別が汎ということでプレイヤーが男でも女でもそれ以外でも「ヒロイン役」をこなせるというのも作為的なものなんだろう。
汎特有の「肉体的な欲望ではなくて心から大事に思ってる」という振る舞いの破壊力はエグい。もうこの先やるゲームのヒロインみんな汎だったらいいのに。

とはいえ「肉体的な欲望」を感じるSQも普通に好きです。彼女も結構デレるとスゴいので、結構な人がやられたんだろうな。
個人的には女性キャラだとジナのほうが好きだけど。
デレデレされるのが嫌って人には夕理子が良いのかな。俺も嫌いじゃないです。

男性キャラでは、みんな大好きしげみちももちろん、胡散臭いロリコンジョナスも好きですね。
ジョナスは最初は底知れぬ不気味さがあったけど、意外と普通のおじさんでした。人形趣味のロリコンだけど

エンディングでしげみちは行方不明になってるけど、マジでタイムスリップしてリトルグレイになったのかな。
亜光速船の存在も提示されていたので過去へのタイムスリップも可能なのかもしれん。
あるいは、「扉」の向こうでセツが無限に人狼ゲームをループする中でなんらかのイレギュラーが発生して、しげみちが銀の鍵を入手していれば、
銀の鍵の能力で19世紀とかにタイムスリップとかしてたりして。その場合、エンディング後のしげみちは普通に行方不明になったことになるが。


個人的にはレムナンとオトメが好きになれなかったかな。私無害ですよって感じ出しておきながら「うるさい」って平気で言うので(言ってない)。
レムナンはSQの母親の性奴隷だったりしたのだろうか?それだったらほんとに「何被害者ヅラしてんだよ!」って感じだけど多分SQの母親はかなりヤバい人間なのでそこはしょうがないか。


まあキャラの魅力の話は尽きることもないが、シナリオについての話に戻ると、
結局、あの世界が電子化された人間の集合意識、グノースの危険に脅かされ続けるのは変わらないということになる。
その辺のグノース、グノーシア関連の話は夕理子が言ってたことを真に受けて終わりになってしまっているので、
「おいおいそこはもっと深掘りしてほしかったぜ」とならざるを得ん。
それはグノーシア2、ってより同IPの別作品があることを期待するしかないのか。非常に肩透かしである。
まあ主人公のループにまつわる話はまとまってはいたので、神シナリオでないにしても間違いなく良シナリオくらいの評価はしちゃうんだけど。
考え始めると、各キャラクターのバックボーンが今回の本編にはさほど大きく関連してないのは少し残念だが、全部まとめてしまうとかなりの大風呂敷になり
それこそライターには「神シナリオ」レベルを要求されてしまいそうだからしょうがない。
うん、「残念だけどしょうがない」というのがどうしても着地点になりそうだ。
残念と感じるくらいには魅力的なキャラクターと舞台設定だったってことですね。


最後に議論パートについての感想を少し。
「思ったよりも人狼ゲームじゃなかった」というのは多くの人が思ったことだろう。
ステータス、スキル、好感度(信頼度)、ヘイトが何より大事ってことに気が付くまでは「えぇ!?なんで俺吊られるの!?」って苛立ちがあったことは否定できない。
その辺の勝敗に関わる多くの要素がマスクされてプレイヤーに開示されていなかったおかげでいろいろ分かってくる前にやめてしまった人も少なくないんだろうと思うが、
これもまたゲームバランスのためには「しょうがない」ってことはクリアまでやった人ならわかるはずのこと。
一人用人狼ゲームってここまでちゃんと作品化するには難しいテーマだったのかもしれないね、と制作陣を擁護したいところではある。

プレイしながら感じたことは
「リアル人間関係を損なうリスクとロジックのバランスや、大量のセオリー、
さらには、ガチで頭悪いと思われる恐怖などのもろもろによって人狼ゲームがなんか好きになれなかった人向けなんじゃね?」

ってこと。要するに俺向け。

人狼ゲーム好きな人向けっぽいストアページしてるけど人狼ゲームが大好きだと逆に受け入れがたい。かも。
だとすればよくここまで評価されたものだと、それだけの完成度だったのだと、やはり制作陣を褒めるしかないですね。


まとめ
神ゲーではなかったのかもしれないけど、俺は好きです。この制作陣で次回作出たら必ず買います。
セツはヒロインオブザイヤー。この俺が言うんだから間違いねえ。